「商品が売れない。もっと広告を出した方がいいだろうか」
こう考え始めると、広告費、投稿回数、フォロワー数ばかりが気になります。けれども、商品を知る人だけ増やしても、選ばれない理由が残ったままなら結果は変わりません。
先に見たいのは、競合商品のレビューです。
特に役立つのは、高評価の言葉よりも、購入後に書かれた具体的な不満です。そこには、事業者の会議だけでは見つけにくい「買う前に知りたかったこと」「使って初めて困ったこと」「期待と違ったこと」が残っています。
ただし、低評価を数件読んで競合の弱点を探すだけでは、商品改善にはなりません。レビューは事実そのものではなく、一人ひとりの経験です。複数の声から仮説を立て、自社の顧客で確かめ、商品や伝え方へ反映する必要があります。
この記事では、既存事業と並行してオリジナルのケア商品を開発し、複数のECモールへ出品したものの販売が伸びず、「広告を増やすべきか」「商品の用途や見せ方を見直すべきか」の判断に迷っていた事業者への実際の支援をもとに、商品改善へつなげる5つの手順を解説します。個社が特定されないよう、事業者名、商品名、地域、売上などの数値は公開していません。
レビューは「宣伝文句」ではなく「改善仮説」を集める場所
競合レビューを読む目的は、他社を批判することではありません。
お客様が購入前後に感じた次の3つを見つけることです。
- 不満:使いにくい、期待した状態にならない
- 不安:自分に合うか、失敗しないか分からない
- 不信:説明と実物が違う、根拠が見えない

この3つは、商品そのもの、パッケージ、説明、販売条件、購入後の支援のどこに問題があるかを考える材料になります。
重要なのは、「競合ができていないから自社の強みにする」と急がないことです。自社にも同じ問題がないかを確認し、改善できることだけを約束します。
レビューから得られるのは答えではありません。検証すべき仮説です。
実際の相談。複数の販路に出しても、オリジナル商品が伸びない
相談者は、既存事業に加えてオリジナルのケア商品を開発し、複数のECモールなどで販売していました。しかし、販売は伸び悩んでいました。
このとき、問題を「広告が足りない」「商品ページへのアクセスが少ない」とだけ捉えると、先に販促費を増やすことになります。
支援で注目したのは、その商品が誰の、どんな場面の、どんな困りごとを解決するのかが広すぎたことです。用途が多い商品は便利に見えますが、買う側からすると「自分のための商品だ」と判断しにくくなることがあります。
そこで、商品の特徴を生かせる新しい用途と対象者を検討しました。対象を絞ることで、誰に試してもらうか、何を聞くか、どんな名称やパッケージにするかを具体化しやすくなります。
当時、実際に行った支援
支援記録から確認できるのは、次の内容です。
- 新しい用途を試せるモニター候補を集め、実際に使ってもらう方針を立てた
- 使用後の感想や困った点を集めることを提案した
- 仮のSNSアカウントを開設し、商品名を募集する投稿を作成した
- 認知と見込み客との接点をつくる企画を検討した
アカウント開設と名称募集の投稿は、支援を受けながら事業者自身で進められました。
一方で、商品名の決定、パッケージ完成、その後の販売数や再購入率までは、記録から確認できません。したがって、この記事では「用途変更によって売れた」とは書きません。
確認できるのは、販売を急ぐ前に対象者と用途を絞り、顧客の声を集める準備まで進めたことです。
先に売り方を変えると、原因が見えなくなる
商品が動かないと、SNSを増やす、広告を出す、値引きをする、パッケージを変えるという案が出やすくなります。
しかし、複数の施策を同時に変えると、何が効いたのか分からなくなります。そもそも「誰の何を解決する商品か」が曖昧なら、広告のターゲットもコピーも定まりません。
先に確かめるべきなのは、次の因果です。
顧客の困りごと → 商品を使う場面 → 解決したい状態 → 商品の体験 → 購入後の評価
ここがつながってから、認知を増やす施策を設計します。
広告は商品の価値を作りません。すでにある価値を、必要な人へ届ける手段です。価値の仮説が弱い段階で広告を増やすと、「届いていない」のか「届いたが選ばれない」のかを分けて検証できません。
広告を増やす前に「選ばれる入口」を整える考え方も、施策より先に顧客行動を確認するという点で共通しています。
現在なら加える改善。競合レビューを5つの手順で分析する
当時の支援では、自社商品のモニターと名称募集を優先しました。現在なら、その前段に競合レビューの分析を加えます。

1. 商品カテゴリではなく「同じ困りごと」で競合を選ぶ
同じ名称の商品だけを比べると、顧客が実際に検討する代替案を見落とします。
たとえば、保湿を目的とする人は、同じ形状の商品だけでなく、別の成分、別の使い方、専門サービス、何も買わずに様子を見ることも比較しています。
競合は「同じ商品」ではなく、「同じ困りごとを解決しようとしている選択肢」で選びます。3から5商品に絞り、レビューが十分に蓄積されているものを確認します。
2. 評価点より「使った場面」を抜き出す
星の数だけでは改善点は分かりません。次の項目を一つの表に記録します。
| 確認項目 | 読み取る内容 |
|---|---|
| 購入のきっかけ | 何に困り、いつ探し始めたか |
| 使用する人 | 誰が、誰のために買ったか |
| 使用場面 | いつ、どこで、どのように使ったか |
| 期待 | 購入前に何が変わると思ったか |
| 不満・不安・不信 | 何が判断や継続を妨げたか |
| 代替行動 | 返品、使用中止、別商品への変更など |
この表があると、「ベタつく」という感想を数えるだけで終わりません。「外出前に使う人にとって、塗った直後のベタつきが困る」のように、改善すべき場面が見えます。
3. 件数、深刻度、自社との関係を分ける
よく書かれている不満が、必ずしも最優先とは限りません。
- 件数:同じ問題がどの程度繰り返されているか
- 深刻度:購入中止、返品、安全面の不安につながるか
- 自社との関係:自社商品にも起こり得るか
- 改善可能性:仕様、説明、同梱物、支援で解消できるか
この4点で優先順位をつけます。
低評価レビューは不満を見つけやすい一方、利用者全体を代表しているとは限りません。高評価レビュー、よくある質問、自社への問い合わせも合わせて見ます。
4. 自社モニターで仮説を確かめる
競合レビューで見つけた問題を、そのまま自社の強みとして掲載してはいけません。
まず、自社の商品で本当に解消できるかをモニターに確かめてもらいます。聞く項目は、満足したかどうかだけでは足りません。
- 使う前に何を期待していたか
- 使い始めて迷ったことは何か
- 続けやすい、続けにくいと感じた理由は何か
- 説明と実際に違いはあったか
- どのような人には勧めにくいか
不都合な声も記録します。その声が、商品改良、注意書き、使い方、対象者の見直しにつながるからです。
モニターへ商品提供などの対価があり、その感想を広告やSNSで公開してもらう場合は、関係性が分かる表示が必要です。消費者庁は、事業者が表示内容の決定に関与し、一般消費者が広告だと判別しにくい表示をステルスマーケティング規制の対象としています。
また、Googleマップでは、無料商品や割引などの特典と引き換えにレビューを依頼する行為や、好意的な内容だけを選んで依頼する行為が禁止されています。商品開発のための非公開フィードバックと、公開レビューの依頼は分けて運用します。
5. 改善先を「商品・説明・販売条件」に分ける
集めた声は、すべて商品仕様の変更で解決するわけではありません。
| 顧客の声 | 主な改善先 |
|---|---|
| 使いにくい、壊れやすい | 商品仕様、容器、品質管理 |
| 使い方が分からない | 説明書、動画、FAQ、同梱物 |
| 自分に合うか不安 | 対象者、使用場面、注意点、比較情報 |
| 期待した状態と違う | 表現、写真、根拠、期待値の調整 |
| 続けにくい | 容量、頻度、価格、購入方法、支援 |
商品自体は変えられなくても、対象者を絞り、合わない人や使い方を明記することで、購入後の失望を減らせる場合があります。

KGI・KPIは「レビュー数」ではなく、商品が合ったかを測る
レビュー数や星の平均だけを目標にすると、評価を集めることが目的になります。
このケースで見るべき流れは次の通りです。
顧客理解 → 商品・説明の改善 → 購入判断 → 使用体験 → 再購入・推奨
- 事業KGI:対象商品の粗利、継続購入による利益
- マーケティングKGI:対象顧客からの購入件数、再購入件数
- 顧客行動KPI:商品ページ閲覧、比較情報の確認、カート追加、購入完了
- 商品検証KPI:モニター回答率、重要な不満の解消率、返品・使用中止理由、再使用意向
- 運用指標:レビュー分析件数、仮説数、検証済み仮説数、改善反映までの日数

「レビューを100件読む」だけでは成果になりません。そこから何を変え、顧客の行動や体験がどう変わったかまで追います。
まず30件読むなら、この順番
- 同じ困りごとを解決する競合を3商品選ぶ
- 各商品の低評価を5件、高評価を5件読む
- 使用場面、不満、不安、不信、期待を表にする
- 繰り返し出る問題を3つに絞る
- 自社商品にも起こるかをモニターで確かめる
- 商品、説明、販売条件のどこを変えるか決める
- 変更前後の購入率、返品理由、再購入を比べる
一度に大量のデータを集める必要はありません。30件でも、同じ場面と同じ困りごとが繰り返し出るなら、次に確かめる仮説が見えてきます。
商品が売れないときの確認リスト
- 誰の、どんな場面の困りごとを解決する商品か一文で言える
- 同じ困りごとを解決する代替案を3つ以上把握している
- 競合レビューを評価点ではなく使用場面で整理した
- 不満、不安、不信を分けて記録した
- 自社商品にも同じ問題がないか確認した
- モニターへ良い感想だけを求めていない
- 商品提供と公開投稿の関係性を明示している
- 改善前後で比較するKGI・KPIを決めている
三つ以上答えに迷う場合、広告を増やす前に商品と顧客理解を見直す余地があります。
売り方ではなく、商品と顧客の関係から整理します
広告、SNS、ECページを直しても、誰のどんな困りごとに応える商品かが曖昧なままでは、改善の軸が定まりません。
MKでは、事業目標、対象顧客、使用場面、競合レビュー、自社の顧客の声を整理し、商品、伝え方、販売導線のどこを優先して見直すべきかを一緒に設計します。確認できない成果を約束せず、検証できる顧客行動とKGI・KPIまで決めます。
